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食物機能研究室

Division of Food Function and Chemistry
 
理事・室長  眞 岡 孝 至
(薬学博士)Takashi Maoka Ph. D.

研究概要

 食物機能研究室では天然に存在する機能性有機化合物、特にカロテノイドの探索とそれらの食品、サプリメントや水畜産分野への応用開発に取り組んでいます。NMR、MSなどを用いた天然有機化合物の構造決定をはじめ、天然有機化合物の生理活性機能さらに生活習慣病の予防効果などの検討をしています。
 その中で天然色素であるカロテノイドについては特に重点を置いて取り組んでおります。天然には約850種類のあまりのカロテノイドが存在します。そのうち遺伝子工学により作られる新規カロテノイドも含めて201種の新規カロテノイドの構造決定を手がけてきました ABB 2009, Carotenoid Science 2009, Carotenoid Science 2020。また多くの天然カロテノイドの分析データを蓄積しております。さらにカロテノイドの微量分析方法の開発に取り組み、これらの方法を用い動物やヒトまた培養細胞でのカロテノイドの吸収、代謝、動態などの検討も行っております。これらの成果は250編の原著論文と多くの総説として国内外の学会誌に報告してきました。国内外の大学や研究所などとの共同研究も積極的に行っています。理化学研究所とのアブラムシ色素の研究はScience誌に掲載されました
 水産や畜産分野でもカロテノイドは重要な化合物です。魚の色揚げや卵黄の品質向上に関する研究にも取り組んでいます
 さらにポリフェノール類や多糖類などの多くの天然有機化合物の研究も行っています。
 NMR、MSによる有機化合物の構造解析や依頼分析を受け付けております。Waters Acquity LC Xevo G2-S Q Tof MSシステムを導入しました。この装置では通常のESIイオン化によるLC/MS分析はもとよりMS/MS測定や高分解能MSの測定ができます。高感度でngオーダーでの検出、定量が可能です。フォトダイオードアレー検出器によるUV-VISスペクトルがオンラインで測定できるためカロテノイドをはじめとする天然色素類の定性、定量分析に力を発揮しています。
  カロテノイドを中心とした分野の基礎研究にも力を注いでいます。多くの大学や研究機関と共同研究を行いその成果を公表しています。最近私の40年来の研究テーマであるトンボのカロテノイドの起源を明らかにしましたBiochem. Syst. Ecol 2020Biochem. Syst. Ecol 2021。私のカロテノイド研究の取り組みについては当ホームページの研究レビユーを参照してください。

主なテーマ

1.天然の機能性有機化合物の探索とその食品、水産、畜産分野への応用開発
 
  特にカロテノイドなどの抗酸化活性物質などのスクリーニングと応用開発をおこなっています。アスタキサ
  ンチン、フコキサンチン、カプサンチンなどのカロテノイドが活性酸素やフリーラジカルと反応するメカニ
  ズムの解析TL 2016J. Agric Food Chem 2016J. Agric Food Chem 2016などに取り組んでいます。
 

2.天然有機化合物の分析、構造解析と機能研究
 
  NMRやMS/MSなどの機器分析を駆使して微量カロテノイドの構造研究やカキシジミトコブシなどから
  特異な構造を持つ新規のカロテノイドを分離、構造決定しました。この他にポリフェノール類や多糖類など
  の多くの天然有機化合物の研究にも取り組んでいます。またHPLC, UV-VIS, MSを組み合わせた天然カロテ
  ノイドのオンライン分析法の開発を行いました。それらは国際カロテノイド学会などで発表しています。
  100種以上のカロテノイドのMS/MSを測定しそれらのデータはMassBank. jp (http://massbank.jp/) に
  公開しています。



3.カロテノイドの機能研究と応用開発
  アスタキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、β-クリプトキサンチン、カプサンチンなどのサプリメン
  ト開発の為の基礎的なデータ、吸収代謝分析、安定性評価などを行っています。


4.依頼分析 
 (1)NMR Varian INOVA-500 による依頼分析を行っています。
    測定核種:1H, 2H, 13C, 15N,19F, 31P, 17O 
    測定項目:通常の一次元測定に加えCOSY, NOESY, TOCSY, HSQC, HMBC, INADEQATE などの
 
 (2)Waters Acquity LC Xevo G2-S Q Tof MSシステムによるMSおよびMS/MS測定、
 
 (3)HPLCによる成分分取
    天然物や合成混合物から目的成分の実験室レベルでの分取を行っています。
 
5.カロテノイドや天然有機化合物についての出張セミナー、講演に応じています。