創立70周年記念シンポジウム

 
生産開発科学研究所
創立70周年記念シンポジウム
カロテノイドと植物脂質成分による健康
 
 平成29127日(金) 1330分より、芝蘭会館別館において、「生産開発科学研究所創立70周年記念シンポジウム」を開催した。
 先ず基調講演として 「カロテノイドその天然色素としての役割」 と題して 一般財団法人生産開発科学研究所食物機能研究室眞岡孝至室長が講演した。天然に存在するカロテノイドの構造的な特徴とその多様性、微生物、植物、動物におけるそれらのカロテノイドの役割について主に化学的な観点から述べた。光合成生物が産生したカロテノイドが食物連鎖を通じて動物に蓄積されそれぞれの動物で独自の代謝を受け機能していることを具体的な知見をもとに解説した。
 続いて京都薬科大学代謝分析分野の安井裕之教授が「カロテノイドと酸化ストレス」と題してカロテノイドによる紫外線による皮膚障害に対する光酸化抑制及びメラニン産生抑制、真皮コラーゲン分子の繊維化抑制、アディポネクチンの分泌促進による抗メタボリックシンドローム作用、抗糖尿病及び脂肪肝抑制効果について講演した。
 アスタリール株式会社山下栄次研究開発部担当部長は「アスタキサンチン健康と美容への応用」と題してマトコッカス藻から抽出したアスタキサンチンによる美容効果、スポーツニュートリション分野での効果さらに眼科領域での臨床応用例などを説明した。
 神奈川工科大学応用バイオ科学部栄養生命科学科の大澤絢子准教授は「栄養学からみたカロテノイド」と題して日常の食事での推奨されるカロテノイドの摂取量や吸収さらにサケの調理方法の違いによるアスタキサンチンの構造の変化など具体的に食物成分としてのカロテノイドについて講演した。
 総合討論、休息のあと二題の特別講演が行われた。京都大学大学院医学研究科メディカルイノベーションセンターの中尾一和特任教授は「ホルモンと摂食・肥満制御-食品と薬品開発へ-」と題して講演した。その中で人生80年の長寿社会で推奨される生活習慣病対策の食事療法として「適度の相対的高脂質高タンパク質低糖質食」(英語名は、”Moderate Diet”で略してMD食)について詳述した。特に脂質の質が重要で、魚類のオメガ3脂肪酸、植物性の不飽和脂肪酸、中鎖脂肪酸トリグリセリド(Medium Chain Triglyceride、MCT)の摂取を推奨した。この食事は地中海食の魚類、野菜、種実、オリーブオイルを使った利点を、伝統的な和食に取り入れたもので「加油減糖」が大切であることを強調した。
 次の特別講演は京都大学大学院農学研究科の河田照雄教授が「脂肪肝、血中中性脂肪改善に有効な健康成分の発見」と題してトマトから分離した脂肪酸酸化機能の活性化につながる成分について詳述した。すなわち培養細胞によるスクリーニング系とメタボローム解析によりトマトに含まれる脂肪酸酸化機能活性化成分を探索したところ、共役リノール酸(CLA)のオキソ体である9-オキソデカジエン酸(9-oxo-ODA)および13-oxo-ODAを 見出し、これらの成分は肥満・糖尿病モデルマウスで肝臓などでの脂肪酸酸化機能の活性化を介した脂肪酸酸化と、それに続く血中および肝臓中の中性脂肪低下と血糖値の改善が見られたことを報告した。
 休息のあと京都大学大学院医学研究科メディカルイノベーションセンターの田中智洋特定准教授が「食品由来脂質による脳食欲・代謝中枢のリモデリング‐リピドミクス研究からのアプローチ」と題して高脂肪食摂取によるマウス視床下部の脂質組成の変化を、経時的かつ網羅的に解析した結果を報告した。その結果、高脂肪食に多く含まれるリノール酸が、エネルギー代謝中枢である視床下部の膜脂質組成を炎症惹起性に変化させることにより、視床下部炎症に促進的に作用し、これがレプチン受容体発現ニューロンの細胞機能の破綻・レプチンシグナルの障害をもたらすことで肥満や代謝異常の発症に寄与するものと考えられた。
 石川県立大学生物資源工学研究所の三沢典彦教授は「バイオテクノロジーによる新規 カロテノイドの創成」と題して健康に有用な機能性が期待される新規または希少カロテノイドを、大腸菌で生産させる研究とカロテノイド4,4’-ケト基導入酵素遺伝子を種々の 農作物に導入する事によりアスタキサンチン、カンタキサンチンといったケトカロテノイドを生産や4-ケトアンテラキサンチン等の新規カロテノイドを農作物で生産させた例を示した。
 最後にJXエネルギー株式会社の川嶋祐貴氏が「アニマルニュートリションとしてのカロテノイド」と題してパラコッカス菌(Paracoccus carotinifaciens)が産生するカロテノイドをニジマス、クルマエビ、ニワトリに投与した効果について講演した。パラコッカス菌由来のカロテノイドはこれらの動物に吸収、蓄積するのみでなく黄色系のカロテノイドにも代謝され独自の色揚げ効果が見られることが示された。
 その後学術奨励資金授与式が行われたのち懇親会が開かれ講演者と参加者の間でディスカッションや交流がはかられた。